ストーンウォール(原題:STONEWALL)
2015年9月に全米で公開された「ストーンウォール(原題:STONEWALL)」が、2016年12月24日(土)から日本で上映されます。
※現在、Amazonプライムビデオで配信されています。
この作品の監督は「インディペンデンス・デイ」「ゴジラ」「デイ・アフター・トゥモロー」などヒット作品を連発するローランド・エメリッヒ監督。しかし、期待に反して予告編が公開されるや全米のLGBTから多くの批判を受けました。
ローランド・エメリッヒ監督がゲイであることもあり、私も期待して見てみたのですが、個人的な感想としては、「ストーンウォールの反乱」と「主人公ダニーのストーリー」のどっちの話が中心なのかがはっきりしないままストーリーが進んでいくので、かなり消化不良でした・・・。ただ、この映画では、「ストーンウォールの反乱に触発された作品」と言われており、「ストーンウォールの反乱」を忠実に再現したドキュメンタリー映画ではないので、それを理解したうえで見るなら良いのかもしれません。
(実話つながりのLGBT映画であれば、2015年4月に日本でも公開された「パレードへようこそ(原題:Pride)」のほうが面白いです。)
ダニー・ウインターズ(ジェレミー・アーヴァイン)は、親元を追い出され、恋人には裏切られ、ニューヨークに向かう。N.Y.グリニッジ・ビレッジでホームレスでお金もなく身寄りもないダニーは、ストリートキッズのグループと仲良くなり、彼らはダニーに 「ストーンウォール・イン」 を紹介する。しかし、この怪しげでマフィアが経営するクラブは、安全な天国からはかけ離れたものであった。ダニーや仲間たちは迫害や差別を経験し、残虐な行為に耐え、警察からは理不尽な嫌がらせを受け、彼らの怒りと不満がついに爆発。彼らの感情はコミュニティーへと広がっていき、一つのレンガを投げたことで、反乱が起こり、平等を求める改革運動が生まれる。
映画概要
タイトル:ストーンウォール(原題:Stonewall)
監督:ローランド・エメリッヒ
脚本:ジョン・ロビン・ベイツ
出演:ジェレミー・アーヴァイン、ジョニー・ボーシャン、ジョーイ・キング、ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ、マット・クレイヴン、デヴィッド・キュービット、ジョナサン・リース=マイヤーズ、ロン・パールマン
ストーンウォールの反乱について
アメリカ近代における同性愛者解放運動で大きな影響を与えた「ストーンウォールの反乱」。こういった反乱があったことは知っているけど、詳しくは知らないので少しだけ調べてみました。(もし間違っているところがございましたらご指摘ください。)
1969年6月28日、N.Y.グリニッジ・ビレッジのバー「ストーンウォール・イン」で起きた暴動。当時のセクシュアル・マイノリティに対する、理不尽な法律や警察による不当な捜査に対して、初めて反乱を起こしたこの事件は、アメリカのマスコミでも連日大きく取り上げられ、事件の翌年、N.Y.で初のLGBTプライド・パレードが行われた。
1960年代、N.Y.グリニッジ・ビレッジは、同性愛者のための場所であり、アメリカで一番安全な場所の1つでした。ストーンウォール・インは、グリニッジ・ビレッジにある多様な集会場所であり、特に、他で快く受け入れられないストリートキッズ、有色人種、ドラッグクイーン、トランスジェンダーなどがストーンウォール・インを自分の家だと思っていました。そこはマフィアが所有している場所であり、彼らが警官に賄賂を渡していたこともあり、他のバーに比べると警察による急襲などの被害は少ない場所でもありました。
同性愛者は、警察による嫌がらせの脅威に絶えずさらされていました。女装をしたり、ゲイにお酌をしたり、他の男性に触れたり、長い間アイコンタクトをしただけで逮捕されることもありました。逮捕されると、新聞に名前が掲載され、家や仕事を失い、学校からも追放されることもありました。
1969年6月28日、ストーンウォールで警察への反乱が起こりました。普段、警官はその場にいる者のIDを確認し、数人を逮捕したらその場を去っていました。しかし、その日の夜は、警官からの嫌がらせの犠牲者たちは、むしろ逃げるでもなく、逮捕に従うのでもなく、反撃し、石やボトルを投げ、警察車をボコボコにし、警官を追いかけたりもしました。実際、誰がこの反撃を始めたのかは定かではありませんが、この反撃に関与したトランスジェンダーのマーシャ・P・ジョンソンが警察車をボコボコにしたと言われていたり、レズビアンのストーメ・デラヴェリーが最初に警官を殴ったとも言われています。
歴史的人物として予告編に出てきたフランク・カメニーは、「Gay is Good」のフレーズの発案者であり、ストーンウォールの反乱の何年も前に同性愛者開放運動の基礎を築いた人物でもありました。
彼らは平等を求めて闘っていたというのもありましたが、「そっとしておいてもらうため」にも闘っていました。何年もの間、のけ者にされ、陥れられ、嫌がらせを受けてきた仲間たちがいました。彼らが望むことは、安心して一緒に集まることだったのです。
当時、同性愛者は、社会のシステムを改革したかったが、そのシステムの一部にはなりたくないという理由から同性婚を望んでいない人も多かったようです。これは社会的な一体性や異性愛社会への同化というよりは、自分たち独自のコミュニティー形成のために「そっとしておいてほしい」というものでした。ストーンウォールの反乱は、多くのアメリカ人が、初めて同性愛者が制度化された嫌がらせや暴力を恐れることなく、オープンに生きて行くための権利を公に要求した姿を目にした出来事の一つでもあります。
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