里親制度という選択肢
今年4月、大阪市の30代と40代の男性カップルが全国で初めて養育里親に認定されたというニュースが報じられました。
里親制度は親の不在や自分の家庭で暮らせない子供を希望した世帯が預かる仕組みで、「養育里親」「専門里親」「養子縁組を希望する里親」「親族里親」の4つの種類があります。
大阪市のカップルは、養子縁組を結ばずに一定期間、子供を預かり育てる「養育里親」を希望しており、児童相談所による調査などを経て、2016年12月に里親に認定され、2017年2月から10代の子供1人を預かっていることです。
日本では、法律上、同性カップルが里親になることは制限されていませんが、制度を運用しているのは都道府県や政令指定都市です。ちなみに、東京都は、里親認定基準を「配偶者がいることが原則」としているため、同性カップルは対象外となっているようです。他県では、今月初めに群馬県が性的少数者(LGBT)のカップルであっても、一定の要件を満たせば、里親として認定する意向を明らかにしています。(関連記事:LGBTの里親 認定の意向)
実際、里親になるには一定の要件はありますし、研修の受講や調査・審査を受けたうえで認定されたりするようなので、誰でもすぐになれるようなものでありません。カップルで里親となるのであれば、二人の関係性も重要ですし、子どもを預かるという責任も伴います。愛情はもちろん、子育てに対する理解、心身の健康、子育て環境を用意する必要もあります。また、里親になりたい側に意向がある一方で、子ども側の意思も尊重される必要もあります。今回の事例では、「同性カップルが里親になれる」という選択肢が増えたということもありますが、「子どもが育つ家庭の選択肢も増えた」ということも考えられると思います。
個人的には「同性パートナーシップ制度」もそうですが、実際のところ、どれくらいのゲイの方々がこれらの制度を利用したいと思っているのか疑問が残るところではありますが、同性カップルにとって生き方の選択肢が増えるのことは嬉しいことです。ご自身の生き方やパートナーとの将来を考えるときに「家族を持ちたい」、「父親になりたい」という想いがあるのであれば、その想いをパートナーと共有して付き合っていくことで、ふたりの共通した将来の目標にもなり得ますし、ご自身が思い描く姿に向かって毎日を過ごしていくこともできると思います。
とは言っても、まだ多くのゲイの方々にとって「子育て」は未知の領域だと思います。
今回は、2人の父親による子育ての実情についての記事をご紹介します。
2人の父親による子育て
ラトガース大学のアンドリュー・リーランド氏は、同性の親による子育ての実状について調査をしている。
ケンタッキー州家庭裁判所のW.ミッチェル・ナンス裁判官は、社会的良心として同性カップルによる養子縁組に関する聴会の開催を拒否すると述べている。彼は婚姻の平等が法律で認められた2015年の最高裁の判決に従わない権限者は他にもいる。いわゆるテキサス州、サウスダコタ州、アラバマ州の信仰の自由法案は、民間の養子縁組斡旋機関による同性カップルへの差別を助長しかねない。
ベッツィ・デヴォス教育長官はこの問題に迫られ、先日、LGBTの親を持つ子供やLGBTの生徒に対して差別をしている学校に対して連邦政府が政府資金を与えるべきではないと考えているかどうかについての回答を拒否している。
これら役人、裁判官、弁護士らはゲイの親がストレートの親とどれくらい異なるのかという調査を確認した方が良いであろう。これまでの研究方法の殆どは、彼らが育てている子供たちの社会的、情緒的そして、認知的な結果に焦点が当てられている。
教育学の博士号を追求する傍ら、現在、ゲイの父親やその家族について研究している元教師として、私は、男性同士で結婚する男性が増える中、彼らがどのように子育をしているのかについて調査している。今のところ、同じような社会・経済状況で、特に自分たちの子供の学校教育において男性同士のカップルとストーレートのカップルにおいて殆どの差異はないということがわかっている。
増大する人口
国勢調査局は、2人の父親を持つ世帯数を見積もっているもののその数を数えているわけではなく、それらの家族を辿って行くのは難しい。
2020年の国政調査で同性カップルの世帯数を把握するための計画は実現する方向に進んでいた。しかし、最近の予算の削減、国政調査のディレクターの辞任、そして政治情勢により、これより先には進まなそうである。
とは言っても、およそ300万世帯による現在進行中の国政調査による人口動態調査のAmerican Community Surveyでは、前々から子育てをしている同性カップルを追っている。2010年では、2人の父親が子育てをしている世帯数はおよそ3万世帯であったが、2015年では4万世帯に増えている。
子育てにおける役割
これらの家庭における親は、どのように特定の役割に落ち着くのであろうか?要するに、異性間における親の役割のように。
調査では、裕福で白人の2人の父親の家庭では、従来の親の役割が忠実に守られていると言われている。一方は一家の大黒柱で、もう一方は、収入が少ない、もしくは専業主夫として子供の世話や家事を担当している。しかしながら、2人の父親のいる家庭では、1940年代のNorman Rockwell(アメリカの日常生活を描いたイラストレーター・画家)が描いたような異性間の子育てのように性差のある子育てに疑問を投げ掛けることができる。
父親が2人ともフルタイムで働いている家庭では、デイケア施設、ベビーシッター、ハウスキーパー、近所に住む親戚にサポートをしてもらっている。これらの男性は社会的、文化的に作られた”母親らしい” あるいは、”父親らしい” 形によりどちから当てはまるかということよりも、それぞれのスキルや強みを元に責任を引き受けさえしている。
コミュニティーと学校との取り決め
私の調査や他の学者の研究が示すように、2人のゲイの父親の子育てが従来の異性の親を持つ家庭と違う点はそこにある。
現在取り組んでいる調査のため、北東地域に住む20組の2人の父親がいる家族にインタビューをしたり、一緒に時間を過ごしたりしているうちに、彼らはより上を目指そうとする傾向にあるということが分かってきた。
多くの親が教室内での親として、ボランティアで教師を手伝ったり、本を読んだり、合唱会をリードするなどして関わるようになっている。中には積極的なPTAメンバーとなりリーダ的な役割を果たしたり、子供の教室の枠を超えた行事を計画している親もいる。さらに、PTA会長を務めたり、教育委員会の一員として働いている親もいる。
一住民として積極的に関わっているすべての親のように、ゲイの父親たちは地元の美術館、図書館を支え、子供達をキャンプや課外活動に参加させている。彼らは、時に社会的公正を求める団体のために奉仕活動にも参加したりしている。
最近の大規模な調査は、2008年に実施したLGBTの学生の学校における安全性を重点的に取り組む団体 ”Gay Lesbian Straight Education Network” によるものであった。その調査では588人ものLGBTの親が対象となり、ゲイの父親は異性愛の父親より学校での活動に参加する傾向があると示されている。
彼らがすべての親のように、自分たちの子供を愛しているという単純な事実とは別に、クラーク大学の研究者のアビー・ゴールドバーグと彼女の同僚は、高まる存在感は一つとして偏見への抵抗や学校においての同性の可視化や受け入れを確立するための父親による新たな取り組みによるものかもしれないと示している。私の現在の調査でも同じ傾向を示している。調査に参加している男性の多くは、積極的に関わることで、前もって教職員や他の家族との潜在的なネガティブな衝突を回避するのに有効であると答えている。
ゲイの父親は安全で誰でも受け入れてくれるような学校やコミュニティーを望んでいる。さらに、彼らは父親になることを阻止するようなナンス裁判官や国会議員に、2人の父親がいる家族があらゆる点において他の家族と変わりないということを分かってもらいたいと思っている。
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