性的指向は変えるものではない
転向療法という言葉を聞いたことがありますか?
英語では主に「Conversion Therapy」と言われていますが、他にも「Reparative Therapy」、「Gay Cure」、「Ex-gay Therapy」という言葉が使われています。
転換療法とは、個人の性的指向や性自認を心理的または精神的介入を用いてヘテロセクシャル、あるいはシスジェンダーの基準や規範に当てはまるように変えることを目的として行われおり、宗教的な動機に基づいて行なわれる場合が多いと言われています。
治療は様々で、カウンセラーと話しながら進めていく会話療法、好ましくない行動や思考を抑止するために不快な刺激やイメージを条件反応的に形成する嫌悪療法、電気ショック療法、性的指向を薬物や酒の依存症と同じような問題として扱う手法などが用いられています。
このサイトでも転向療法に関連した映画を紹介してきました。
今回ご紹介するのは、8月3日(火)よりNetflixで配信スタートする『祈りのもとで:脱同性愛運動がもたらしたもの(Pray Away)』です。
監督を務めたクリスティン・ストラキス(Kristine Stolakis)にとって、この映画は個人的なつながりがあり、彼女の叔父が子供の頃にトランスジェンダーだとカミングアウトするとセラピストの所に連れていかれ、転向療法を受けさせられたとのことです。また、映画監督として脱同性愛運動について調査していくにつれて転向療法は至る所で行われていることを知り、アメリカ単体だけでもおよそ700,000人もの人が転向療法を受けているとのことでした。
先述の通り、転向療法の多くは宗教的な動機で行われてるということもあり、日本ではほとんど耳にしないようなものではありますが、海外ではこの転向療法を禁止する動きがあり、ブラジル、エクアドル、マルタ、台湾、ドイツは国レベルで禁止されています。また、アメリカ(20州&自治体レベル)、UK(イングランド&ウェールズ)、オーストラリア(2州+首都特別地域)のように一部の州や地域で禁止をしている国々もあります。
この映画では、1970年代以降、脱同性愛運動の一環として転向療法を推進していた組織であるエクソダス・インターナショナル(Exodu International)を取り上げています。当時、福音派教会に所属する5人の男性らがゲイであること悩み、「同性愛のライフスタイル」から抜け出すために聖書の勉強会を開始したところ、彼らのもとには助けを求める25,000通以上もの手紙が届き、1976年にエクソダス・インターナショナルを設立しました。2013年にこの組織は解散をしていますが、現在も新たなネットワークを形成するなど形を変えて活動している指導者もいます。
この映画の中の登場人物の一人であるジュリーはエクソダスに巻き込まれた数万人のうちの1人で、16歳の時に両親にカミングアウトすると、彼女の母親は彼女を居住型転向療法のプログラムに送り込みました。その後10年間、彼女はストレートになるための毎週、心理的・行動・宗教カウンセリングを行っていました。一方で、脱同性愛者運動の指導者らは「性的指向は変えられる」というメッセージを伝えながらも「同性に魅かれる気持ち」を消し去ることはできませんでした。
この作品では、脱同性愛者運動の元指導者や参加者にインタビューを行い、当時の振り返りと現在に至るまでのそれぞれのストーリーなどが描かれています。
是非、ご覧ください。
脱同性愛運動の元指導者や参加者のインタビューを交えながら、”転向療法”がLGBTQ+コミュニティにもたらした弊害と、今なお続く影響について検証する。
映画概要
タイトル:祈りのもとで:脱同性愛運動がもたらしたもの(Pray Away)
配信日:2021年8月3日(火)
監督:Kristine Stolakis
プロデュース:Kristine Stolakis、Anya Rous、Jessica Devaney
コメント