映画『Alone Out Here』|気候変動対策に取り組むオーストラリアのゲイのファーマーを描いたドキュメンタリ―映画

picture from Alone Out Here
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アウトバックに暮らすゲイがたどり着いた境地

最近特にメディアでも多く取り上げられるようになったSDGs(Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標))。既にご存じかと思いますが、SGDsは、17の大きな目標とそれらを達成するための169の具体的なターゲットで構成されています。

その中の一つに「13. 気候変動に具体的な対策を」というものがあります。

皆さんも感じているように日本はもちろんのこと世界各地では、気候変動によって気温の上昇、洪水、干ばつ、山火事など様々な災害が起こっており、世界各国が協力して地球温暖化対策に取り組んでいます。そして、気候変動だけではないですが、現在我々が直面している問題に対して誰かが代わりにやってくれるまで待つのではなく、我々一人ひとりが自分事として考え行動していかなくてならない時期が既に来ています。

今回、そんな取り組みに関連したドキュメンタリー映画をご紹介します。

まず最初に「牛」と「気候変動」に関係があるのをご存じでしょうか?

我々はあまりそういった事を気にもせず、牛肉を食べたり牛乳を飲んでいます。しかし、「牛は環境に悪い」とも言われしまうこともあるようで、それは牛がゲップをすることで二酸化炭素と比較して25倍もの温室効果のある「メタン」を排出するからとのことです。(詳しいことはNHKのサイトをご覧ください)

今回ご紹介するのは、都市部から離れた地方に住み気候変動対策に取り組むオーストラリアのゲイのファーマー、ジョン・ライト(Jon Wright)についてのドキュメンタリー映画『Alone Out Here』です。

このドキュメンタリーは、地方で生活をするLGBTQ+に焦点を置いたドキュメンタリーを撮影するというNetwork 10とスクリーン・オーストラリアの取り組みの一環で助成金を得て制作されました。監督はルーク・コーニッシュ(Luke Cornish)、プロデューサーはフィリップ・バスフィールド(Philip Busfield)が務めています。

ジョン・ライトは、オーストラリア、ニューサウスウェールズ州にあるカウラ(Cowra)出身の種雄牛/商用牛の生産者です。

カウラは、シドニーから車で約4時間の州中西部に位置し、日本と関連する場所でもあります。第二次世界大戦中のカウラには日本人捕虜収容所があり、1944年8月5日に日本人捕虜1,104人による史上最多の集団脱走事件の「カウラ事件」が起こりました。この事件により、日本人捕虜234人、オーストラリアの監視兵ら4人が死亡しました。そのため、このカウラには日本人墓地と南半球で最も面積の広い日本庭園があります。

カウラから約20キロほど離れた北東部にある小さな町、ウッドストック(Woodstock)にある4世代続くライト一家の牧場であるCoota Park(母親は約10年前に他界し、父親は認知症のため、現在はジョンが農場を引き継いでいます)では、ジョンによって改良されたアンガスとショートホーンを交配したBlue-Eと呼ばれる通常の牛よりメタンの排出量が少ない品種の牛を飼育/販売しています。

ジョンは牛が排出する大量のメタンのことを知り、自身が所属する畜産業が気候変動の一因となっていることを知り責任を感じるようになったとのこと(映画の冒頭でも”牛肉産業はオーストラリアの温室効果ガスのおよそ10%を排出しており、このうち2/3は牛によるものである”という文章が映し出されています)。彼は畜産業における気候変動に対する姿勢を変えたいと感じるようになりましたが、そんな彼のことを快く思っていない一部の同業者もいるとのことです。

また、この映画の中では、ファーマーとしてのジョンだけではなく、地方に住むゲイのジョンについても取り上げています。自分が情熱を注ぐ仕事と都市部に比べると出会いの機会も少ない保守的な地方に住むゲイとしての人生との間に生まれる葛藤やこれまでの恋愛関係、また、それらを通して本当の自分に気づくまでのジョンの心境の変化などが描かれています。境遇は違えど我々が学ぶべき自分らしく生きるために必要をことを考えさせてくれるような作品です。

ジョン・ライトというファーマーでありゲイである一人の人間としてとても魅力的な方をとりあげたとても興味深いドキュメンタリー作品です。日本語字幕はありませんが、自動翻訳機能はありますので、是非ご覧ください。

映画概要
タイトル:Alone Out Here
国:オーストラリア
監督:ルーク・コーニッシュ
プロデューサー:フィリップ・バスフィールド

気候変動対策に取り組むゲイのファーマー

2017年から2019年までの間、南東オーストラリアは干ばつに見舞われた。人口が一番多い州のニューサウスウェールズ州では、家畜の大半が飼育されており、過去最悪の最高気温と最長の干ばつの日々に見舞われた。思い出せる限りではその干ばつはこれまでで最悪なもので、2019年と2020年に史上最悪の森林火災を引き起こした。多くの大気科学者らはここに至るまでの激しさは気候の変化の結果によるものだと考えている。しかし、畜産農家の中ではその姿勢は物議を醸すものである。

ルーク・コーニッシュのドキュメンタリー『Alone Out Here』の主人公であるジョン・ライトは、20年間、彼の家族の牧場であるCoota Parkで過ごし、通常の牛より少量のメタンを排出する牛の品種改良を行った(他の家畜と同様に牛は消化中に二酸化炭素より強力な温室効果ガスの炭素化合物であるメタンを排出する)。過去数年間、ライトは定期的に公の場において自身が属する産業がどれほどオーストラリアの炭素排出量の一因になっているのか、それは一人当たりで言えば世界で最も多いということを伝えている。ライトは、彼が牛の販売会や会議といった業界に関連した場で畜産が与える環境への影響について話をし始めると、それを聞いた人々は彼だけではなくその話題を持ち込んだ人なら誰に対しても嫌悪感を示していたと私に述べた。「彼らはあなたのことをちょっと頭がいかれてると思ったんだね」

地方に住むクィアの人々を描いた作品に対して割り当てられた政府の芸術助成金を得たコーニッシュの映画は、ライトのセクシャリティと彼のこの沈黙に立ち向かう意欲との関係性を紐解いている。ライトがカミングアウトをしたのは28歳の時であった。彼の地方での生活は比較的孤立したようなものであり、パートナーを探すことも困難であるにもかかわらず、彼は2010年に事業を引き継ぎ、農場に留まることを選んだ(ライトには2人の兄弟がいるが、彼らは都市部に住んでいる)映画の中で、ライトは自身の遠慮なく物を言う特性はカミングアウトの後押しとなった嘘に対する反感が動機となっているのではないかと考えている。コーニッシュもまた私に、ライトの長年抱え続けてきた「部外者」としての自意識は、彼が他者に比べて不安な真実をも受け入れる準備が整っていることを意味しているのだと思ったと述べた。

コーニッシュと制作パートナーのフィリップ・バスフィールドは、Grindrでライトを見つけ、2、3問ほど基本的な質問に答えてくれるか尋ねた。ライトは率直に返答をした。孤独を少なくとも当面の間、受け入れようした苦難について話してくれる人や、我々すべてが感じ、我々すべてが躊躇してしまうような自分自身について何かしら話をしようとしてくれた人に出会えたことに安心したとコーニッシュは私に述べた。『Alone Out Here』の中で、コーニッシュは、ライトが数年前に別れた直近の長期にわたる恋愛関係を思い出しているシーンを撮っている。デートのためにシドニーに片道4時間かけて車で移動していた頃のことをそれとなく述べている。ライトは、1970年代後半以降、ゲイのナイトライフの中心となっている大通りのオックスフォード・ストリートに通っていた。コーニッシュは、ライトが経験してきたことの多くはある意味、不本意なことであり、ほとんどの人が共感できるようなものではあるが、ライトにとっては、ゲイコミュニティーからの物理的な距離もあり、それは計り知れないくらい厳しいことだったように思えたことを撮影を通して分かったような気がすると私に述べた。コーニッシュは調査を通して地方に住むゲイのオーストラリア人から似たような話を耳にした。「それは常に大きな賭けといった同じようなストーリでした。なぜならデートに失敗は許されないからです。都市部のクィアの人であれば同じ週末に他に3人の相手に出会う機会があります。でも、あなたが戻る場所は、限られた人しかいない場所だからです」

『Alone Out Here』は、ライトがゲイであることと気候に対する意識がきっかりと同等の位置づけとしないよう配慮されている。しかし、両方の資質は、恐らくコーニッシュの言うとこのライトの「農家のストイシズム」によって形づけられた彼の信念によって生じる結果に対する責任を取ることをいとわないということを証明している。ライトは、干ばつ期、山火事、洪水の後の一年以内には、畜産業における炭素排出量の責任についての議論に対する耐性に変化が見られると思っていたと私に述べた。しかし、彼は今後も彼の話が受け入れられないような場所に2、3ヶ所訪れなくてはいけないとして彼は気にしないであろう。「私は自分がもつ情熱と我々が探し求める将来のために背中で弓を受け止める覚悟はできています」と彼は私に述べた。「その弓を引き抜いて、放り投げて、前に進むだけです」

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