同性婚の是非を問う郵便投票結果
先日お伝えしたオーストラリアの同性婚の是非を問う郵便投票の続報です。
オーストラリア統計局は15日、同性婚の是非を問う郵便投票の結果について賛成多数であったと発表しました。今回の投票に法的拘束力はありませんが、マルコム・タームブル政権は賛成多数なら同性婚の合法化に向けた法改正案を年末までに議会に提出するとしています。
年末まで、オーストラリアの同性婚合法化への動向に注目していきたいと思います。
オーストラリア 同性婚合法化へ一歩前進
オーストラリアは、歴史的な国全体の同性婚の是非を問う調査において賛成多数となった。
およそ1300万人のオーストラリア人(79.5%)が、国内の法的拘束力のない郵便投票を行った。その投票率は、UKの欧州連合離脱是非を問う国民投票より高いものであった。
歴史的な投票は、国民投票による同性婚の承認を得たアイルランドの先例に倣っている。
オーストラリアは、同性婚を導入する世界で25番目の国になり得る。
投票結果は、オーストラリア東部夏時間の午前9時、標準時間の午前11時に統計学者のデビッド・W・カリッシュ氏によって発表された。
12,727,920人が調査に回答し(回答率は79%)、カリッシュ氏は、素晴らしい投票率であったと述べている。
賛成61.6%、反対38.4%であった。
年齢層では年配層の方が投票率が高く、若者層の方が低かったが、著しいものではなかったとのこと。
カリッシュ氏が結果を発表する前に、政府大臣やYes/Noキャンペーンのリーダーも含め、多くの議員に伝えるということはわかっていた。
オーストラリア国内のYesキャンペーンの本部は結果が発表される前にドアを開き、水曜日の朝から祝杯が行われた。
首相任期中に同性婚を導入した保守派のデビッド・キャメロン前英首相は、この知らせを歓迎した。
NOキャンペーンでは、これまで結果は40%を超えると述べており、トニー・アボット前豪首相は”モラル” の勝利になるであろうとも言っていたが、敗北を認めることになった。
同性婚を支持するマルコム・タームブル豪首相は、賛成支持が多数を占める場合は、政府はこの動きを支持するということを約束していた。タームブル首相は、以前、賛成支持が多い場合、同性カップルは今年の年末までに結婚できるようになるであろうと述べている。
しかしながら、最終的にはその判断も議会で承認されなくてはならない。
国民投票には法的拘束力がないため、合法化されるためには両院で法案を可決させる必要がある。
同性婚法案が最初に下院で審議されるは今週中ではなく、来週月曜日になる。
法案は、総督によって署名され法律として成立するまでに両院で可決される必要がある。
保守連合を統治する強硬派の反LGBTの議員たちは、国民が同性婚を支持したとしても譲歩しないと述べている。
2つの法案が議会に提出されることになっており、1つは同性婚支持連合による他の政策を導入するための立案、もう1つは、右派議員によって様々な”宗教の自由”を含む同性婚に関する立案である。
自由党のジェームス・パターソン議員は、州やテリトリー議会によって成立した反差別法を無効にする差し止め請求法案を提出することになっている。
そのプロポーザルでは、民間サービス事業者の差別を許容し、伝統的な結婚において、宗教的もしくは良心的信念をもつ者が同性間の結婚式を拒否することを許可することとしている。
世論調査においてサービス事業者は、私的な宗教観をもとに同性間の結婚式を拒否しても良いと半数以上のオーストラリア人が考えているということが明らかになっている。
強硬派は、彼らが望む法案が通らなかった場合、法案導入を大幅に変更もしくは、遅らせるなどして様々な修正案を提出するかもしれない。
しかしながら、野党労働党が策を支持し、国会議員の多数も支持していることを考えると、同性婚が導入されない可能性は低い。
関連記事:We do! Australians vote Yes to same-sex marriage in historic result
日本での同性婚 – まずは当事者意識から
他国での同性婚に関するニュースが入ってくると「日本でも!」といった声が上がったりします。
恐らく「日本でも同性婚が実現したら嬉しい!」と思う当事者の方は多いかと思います。特に同性婚に反対する理由も見つからないですし、私もそう思います。
しかし、現実的には、同性パートナーシップにも同じようなことが言えますが、同性婚をするということは社会へのカミングアウトをするようなものであることを考えると、利用してみたいけどできないといった人も多くいるのかもしれません。(法的保護、税や社会保障上の権利や給付があれば少しは変わってくるかもしれませんが。)
単純に数字だけの話をしてみると、オーストラリアの人口は約2400万人、今回の調査対象が1600万人。その内、約1300万人が調査に回答し、賛成が61.6%となると、賛成した人数は、約800万人。これは、全人口の1/3にあたります。
一方、日本の人口は、約1億2600万人。全人口の1/3は、約4200万人になります。
さらに、ここ近年、何かと呪文のように
性的マイノリティー(LGBT)は、全体の7.6%、13人に1人が当事者
と唱えられていますが、これを人数に置き換えてみると、約957万人になります。
人数だけであれば、当事者だけでは全人口の1/3の4200万人にはまだまだ足らないです。
オーストラリアは、同性愛に寛容的なイメージがあるのにも関わらず、全人口の1/3の賛成があってやっと同性婚合法化が現実なものになってきました。もちろん、賛成票を投じた方の中には当事者だけではなく、当事者ではないけれど同性婚を支持した方もいたでしょう。
では、日本での同性婚は絶望的なのでしょうか?!
日本でオーストラリアのように同性婚の是非を問う国民投票を行っても、賛成が半数を超えるとは思えませんし、それ以前の問題のような気もします。法律などの詳しいことは正直分らないですが、日本の場合は、何よりも、当事者が本当に同性婚を望んでいるのかが明確にならないことには実現しようにもできないのではないでしょうか。
日本にも長年連れ添っている同性カップルやお子様がいらっしゃる方も多くいらっしゃると思いますし、そういった方々にとっては法的・社会的保障は適切に対処されるべきです。
一方で、中には、現状にそれほど困るような状況に置かれていないことで(例えば、特定のパートナーがいない、まだ若い、そもそも望んでいない等)、 ”じぶんごと” として考えられない、考える機会がないのかもしれません。
個人的には、「結婚ができるようになったから結婚する」ではなく、「結婚したいと思ったから結婚する」であり、「公正証書をとりあえず作成しておけば、法的効力を期待できて安心」ではなく、「パートナーと長年付き合っているので、将来的な事を考えて公正証書を作成する」といったように、必ずしも制度や保障ありきで考えているわけではありません。そこに至るまでのプロセスがあってこその制度や保障であり、それらを無視してはいけません。
「海外で同性婚が合法化されているから、日本でも同性婚を合法化したい」という主張はあまり説得力がありません。重要なのは、日本で必要なのかどうなのかといった点です。
もし本当に人口の7.6%が性的マイノリティーであるというのであれば、まずはその当事者たちから、同性婚を本当に望んでいるか否か、またなぜそう思っているを聞いてみる必要があると思います。そして、その先にどんな暮らしをしていきたいのかなどの現実的な声を聞いて共有していかないことには、何も進んでいかないのではないでしょうか。
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