都道府県単位で初のパートナーシップ制度
茨城県の大井川和彦知事は6月24日の定例記者会見で、LGBTのカップルを結婚に相当するパートナーとして認める「いばらきパートナーシップ宣誓制度」を7月1日から始めることを発表しました。都道府県単位での同制度は初となります。
今年1月に都道府県単位で初となるパートナーシップ制度の導入を検討しているということで期待されていた茨城県でしたが、県議会最大会派のいばらき自民党は「人権に配慮したり差別解消を図ったりする方向は同じ。ただ、現段階でパートナー制度は社会的に認知されていない」と主張し、導入は時期尚早として、条例改正案の修正案を提出することを決めました。
知事は、県議会の意見を受けて、LGBT支援策について当事者と有識者で検討する勉強会を実施してきました。そして、6月12日にはLGBT支援策を検討してきた勉強会の報告書が県に提出されました。ところが、県議会最大会派の自民党が「時期尚早」とする提言書を19日に執行部に提出し、事実上の反対を表明しました。このため、議会の同意なしに知事が独自で判断できる要綱として導入することとなりました。
「いばらきパートナーシップ宣誓制度」の創設 | |
概 要 | ・婚姻制度とは異なり「一方又は双方が性的マイノリティである2人の者が,互いをその人生のパートナーとして,相互の協力により継続的に生活を共にしている,又は共にすることを約した」ことを宣誓する。 ・パートナーシップの関係にある者同士が揃って,宣誓書等を県に提出し,県 は受領証を交付する。 |
対象者 | ・性的マイノリティの方 (一方又は双方) |
要 件 | ・双方が成年で,配偶者(事実婚を含む)がいない。 ・近親者でなく,双方以外にパートナーシップの関係がない。 ・県内に居住(転入予定を含む)。 |
方 法 | ・双方が揃って,「宣誓書」等を県に提出する。 ・県(福祉指導課)は,「宣誓書の写し」「受領証,受領カード」を交付する。 |
施行期日 | ・令和元年7月1日 |
受領証等の利用 | ・県営住宅の申し込みに利用できます。 ・県立中央病院での手術同意等の際に利用できます。 ※市町村,関係団体等の理解と協力を得て,利用先の拡大を図ります。 |
以下は、茨城県のHPに掲載されている6月に行われた県政記者クラブとの定例記者会見での発言内容の抜粋したものです。
〇性的マイノリティへの支援策について
知事(幹事社):3つ目が,性的マイノリティへの支援策についてでございます。4月の記者会見で申し上げました性的マイノリティへの支援策勉強会を,4月から6月にかけて,全体で4回開催したところでありますが,このたび,性的マイノリティの方への生活上の困難を解消するための支援策が取りまとまり,先日,報告書の提出をいただいたところであります。報告書では,県が独自にできる施策を,一つ,実態調査,二つ,教育・啓発,三つ,環境整備・支援策,この3つの項目で取りまとめていただきまして,県では,この勉強会の報告書を踏まえて,項目ごとに,ご覧いただいたとおり,「いばらきパートナーシップ宣誓制度」の創設をはじめとする各種施策について早期に実施したいと考えております。
「いばらきパートナーシップ宣誓制度」につきましては,都道府県レベルでは初めての取り組みとなります。この制度は,婚姻制度とは異なることを明確にした上で,一方,または双方が性的マイノリティの方が互いをパートナーとして,相互の協力により継続的に生活を共にしている,または共にすることを約束した旨を宣誓していただくものであります。
具体的には,お二人にそろって宣誓書等を県に提出いただき,県では,宣誓書の写し,受領証,受領カードを交付いたします。要件としては,双方が成年で配偶者がいないこと,近親者でなく,双方以外にパートナーシップの関係がないこと,県内居住などといたしております。
受領証を県営住宅の申し込みに利用するほか,県立中央病院での手術の同意などの際にもご利用いただけますし,また,今後,市町村やそのほか関係団体に協力を得ながら,受領証の利用先の拡大を図っていきたいと思っております。
受領証の交付までの手続き,流れでございますが,まずは事前相談として,電話やメール等で要件,必要書類等の確認のほか,宣誓日の日程調整を行うと。次に,事前に予約した日にお二人でそろってパートナーシップ宣誓書等を提出いただきます。提出書類としては,宣誓書,要件確認書,また,添付書類としては,住民票の写しと独身証明書を提出いただき,当日は本人確認書類としてマイナンバーカードや運転免許証をご提示いただくという形になります。書類等に不備がなくて,宣誓が適当と認められる場合は,事前に日程調整した日に宣誓書の写し等を交付いたします。宣誓書の写しには,A4サイズの受領証,またはカードサイズの受領カードのいずれか,または両方を添えて交付いたします。受領証,または受領カードは,お二人に1枚ずつ交付する予定でございます。性的マイノリティの支援策については,以上でございます。
読売(幹事社):幹事社の読売新聞から質問させていただきます。この制度をめぐっては,勉強会が6月上旬に報告書をまとめまして,いばらき自民党が,先週,緊急提言という形で意見を出されていると思います。パブリックコメント等を実施せずに,かなりスピーディな感じの実施となるわけですが,ここまで制度のスタートを急いだというか,早めた理由について改めて教えてください。
知事:自民党の緊急提言も踏まえて,今回,市町村との連携でありますとか,あるいは,パートナーシップの名称についても,パートナーシップ宣誓制度という形にしたとか,様々な配慮はさせていただいておりますが,いずれにしても,スピード感をもって取り組まなければならないというのは,この扱う問題が基本的人権に関わるものだからということでございます。人権を侵害するような差別,偏見というものにいち早く対処していくというのが行政の最大の務めであるという認識のもとに,スピーディな対応をしたということと,もう一つは,既に似たような取り組みを,都道府県レベルでは今回初めてですが,市町村レベルでは全国20以上の団体が取り組んでいると。その取り組んだ成果として,特段大きな問題というのは今までのところ報告されていないということなども踏まえて,これはスピーディに行ったことのメリットに対して,デメリットは非常に少ないということで,メリットの方が非常に大きいという判断をして,今回,スピーディな対応をとらせていただきたいと思っています。まずはこれでスタートして,問題点がもし今後出てきた場合には,どんどんそれに対して対応を変えていくということで,立ち止まるのではなく前に進んでいくことの方が,扱う問題が人権であるだけに,重要なのではないかなという考えに基づいて,今回やらせていただきたいと思っています。
読売(幹事社):もう1点お願いします。実際にこれを制度としてやるのは県ですが,いろいろな対応をするのは市町村で,いろいろな問題が持ち込まれたりだとか,あるいは混同されるケースがあると思うのですが,市町村との連携については,あと1週間で制度開始ということですが,何か図られているのでしょうか。
知事:7月に実施する前に,市町村の担当課長,あるいは,各市長会,町村会にも,内々には実は説明させていただいているのですが,正式にきちんと説明する場を設けていきたいと思っています。
また,特に,相談窓口とか様々な施策はそれぞれのレベルでやったらいいと思いますし,パートナーシップ宣誓制度をどう使うかというのは,その使う側が今後どういうふうに広がっていくかということですが,これは一気に広がらなくてもいいと思っているのです。まずは県営住宅や県立中央病院で始めます。あるいは,積極的な市町村では,いち早く我々の説明を聞いていただいて,市立の病院であるとか,あるいは市営の住宅とか,そういうところに対応していただけると思いますが,これを使っていかに茨城県の中で各自治体,県のレベルであっても,市町村レベルであっても,性的マイノリティの方々が胸を張って自らのアイデンティティにきちんと誇りを持って生きていけるような環境をつくっていくかというのは,これからの取り組みにかかっているのかなと思っていますし,この制度をつくることは,まずはスタートラインに乗ったということなのかなと思っています。
今回の「いばらきパートナーシップ宣誓制度」の創設で大井川知事がおっしゃっているように「スタートラインに乗った」のかもしれませんし、県内市町村もパートナーシップ制度を導入を検討するきっかけになるかもしれません。
一方、会見で記者から質問もあったように、そのためにも県と市町村との連携は不可欠となってきます。また、「公営住宅の利用」と「病院での付き添い」ができれば大井川知事がおっしゃるような「性的マイノリティの方々が胸を張って自らのアイデンティティにきちんと誇りを持って生きていけるような環境」ではないので、当事者はもちろん、市町村に対しても「いばらきパートナーシップ宣誓制度」を導入する目的やメリットを明確に示す必要もあるでしょう。
都道府県単位で初の「いばらきパートナーシップ宣誓制度」が良い方向に向かうよう期待しております。
コメント