親のことをどれくらい知っているのだろうか
父親と母親のいる家庭、片親の家庭、その他の様々な家庭といったように育った環境も違えば、親との関係性や距離感も人それぞれです。
私の家は父親、母親、姉、兄の5人家族で、ごくごく一般的な家庭でした。母親は頑張り屋で、子供の卒業式に保護者代表で謝辞を読んでしまうような人です。ちなみに小・中ともに涙を流しながら謝辞を読んでいました。父親は真面目で頭も良い人でしたが、少し不器用な人でもありました。父親と母親はお見合い結婚で、母親いわく、父親とは結婚するつもりはなかったようですが、お見合い後の父親の猛アプローチに押されて結婚をしたようです。
先日、車を運転していたら助手席に座っていた母親が「ほら、そこに駐車場があるでしょ。そこに昔はアパートがあったの。お父さんが大学卒業後に就職したときに、そのアパートの2階で一人暮らししてたの。結婚してすぐに引っ越ししちゃったから2回くらいしか行ったことないんだけどね」と父親とのエピソードを教えてくれました。
私が小さい頃は父親とどこかに遊びに行ったり、キャッチボールなどスポーツをしたりといった記憶はあまりなく、覚えているのは週末に父親が趣味の囲碁をするために通っていたボロボロの碁会所に一緒について行ったことくらいです。
そんな父親も12年前に病気で亡くなりました。父親は亡くなるまで自宅療養をしており、当時、私の職場も実家から通える範囲だったため、父親が亡くなる前の2年間は実家暮らしをしていました。父親が完全に寝たきりになったのは亡くなる半年前くらいからだったのですが、実家暮らしの2年間は食事の介助、おしめの交換、体を拭いたり、着替えを手伝ったり、床ずれができてしまったときは定期的に体の向きを変えてあげたりと、家にいる時はできる範囲のことはやっていました。
一般的な父親が子供にするようなことはあまりしてもらえなかったけど、そんな父親が私にとっての父親だったのです。父親も我々子供たちが成長すればするほどどうやって接したら良いのかわからなかったのだろうし、腹を割って話をするといったタイプでもなかったので、父親が私たちのことをどう思っているのはわかりませんでした。ただ、父親が亡くなって遺品整理をしていた時に見つけたメモ書きを見て「やっぱり父親なりに色々考えていたのかな」と思ったのと同時に「なんで自分から話をしようとしなかったんだろう」と後悔もしました。
父が亡くなってから母親との向き合い方も少し変わり、私が母親に6年前にカミングアウトをしようと思ったのも、父親とのこともあったからかもしれません。父親が病気になってから家族を支えてきたのは母親で、当時は日々の疲労から湯船の中で寝てしまったり、実家で犬を飼っていたときは、夜、犬の散歩の途中に道で立ったまま寝てしまい、そこを通り過ぎた人の笑い声で目を覚ましたなんてこともありました。
そんな母親に結婚もしない息子が東京で何をしているのかわからないままモヤモヤさせてしまうよりは、理解まではしなくていいから、自分について伝えとおきたかったのと、知っておいてもらいたかったというのがありました。実際のところどこまで受け入れているかはわからないですが、毎年1回はパートナーと帰省し、東京に戻るときは母親から「2人分作ったから一緒に食べなさい」と言ってくれるようにもなりました。(うちの母親はたまたま寛容的でしたが、なかなかそうにはいかない親御さんもいらっしゃいます。カミングアウトは必ずすべきことでもないですし、親や周りの人などにカミングアウトしても良いと思えたらしてみても良いかもしれませんが、少しでも迷っているならその迷いが完全に解消されるまで待つべきだと考えております)
親はいつかは亡くなる
現在、母親とは離れて暮らしていますが、何かあれば兄が直ぐに駆けつけることもできますし、私も帰ろうと思えば電車で1時間半くらいの距離なので、1〜2ヵ月に1回は帰省するようにしています。
幸いなことに母親はまだまだ若々しく元気ですし、町の公民館で講座の講師をお願いされたりと毎日忙しそうにしています。ただ、現在の年齢を考えると、この状態が10年後も同じかといえばそうではないでしょうし、自分自身もどうなっているのかもわかりません。また、我が家の場合、父親は既に亡くなっているので、母親が亡くなったら基本的には姉兄とどうにかしなければいけません。
そのため、母親と話し合いのうえ、万が一のことを考えて、母親からは少しずつ家やお金のこと、親戚との関係などについてちゃんと教えてもらうようにしました。昔から「この家には残すような遺産はないからね」と言われていたのですが、「そんなことないだろう」と思っていたら、結構本当でした・・・。
親はいつかは亡くなりますし、自分より先に亡くなる割合のほうが高いです。そして、どんなに準備をしたとしてもその時にならないとわからないこともありますし、むしろ想定外のことはいろいろと起こるものです。それでも事前に知っておく、話だけでもしておくことは必要だと思います。
実家に帰り、母親と話すことで、母親の日常を知ることもできますし、何に困っているのかも把握できたりします。この前は、ガラケーからスマホの買い替えの付き添いに行ってきました。
中には、距離的な問題などで会いには行きたいけれど、そんなに頻繁に会いにいけない方もいれば、親子関係が良くないといったこともあります。それぞれ様々な事情もあり親の面倒をみたくてもみれない、もしくは面倒をみたくない場合もあります。そこは、無理せずに自分ができる範囲や方法でやってみることから始めてみるのも良いかもしれません。
自分が老いれば、親も同じく老います。
この機会に、親とのかかわり方を改めて考えてみてはいかがでしょうか。
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