自分の体や筋肉への執着
もっと自分がマッチョだったらな~。
そんなこと思ったことありませんか?私もその1人です。
一般的に外見重視と言われているゲイの世界。そんな過酷な世界で生き抜くためにジム通いに精を出しているゲイの方々も多いのではないでしょうか。
努力の甲斐もあり理想の体型になれた人もいれば、途中で断念してしまった人もいるでしょう。また、築き上げた体型を維持するために忙しい合間を縫ってジム通いをしている人もいれば、維持できず元の体型に戻ってしまった方もいるでしょう。
結果はどうであれその努力は決して無駄なものではないですし、むしろご自身の体と向き合う良い機会になったと思います。また、理想の体型になることとそれを維持することにはかなりの労力がいることも実感できたことでしょう。
傍から見るともう十分に思えることでも、完璧さを求めているがために、その人にとっては「まだまだ」といった感じで更に追及していこうとすることがあります。それは外見にも言えることです。
「筋肉醜形障害(Bigorexia/ビゴレキシア)」をご存じでしょうか?
筋肉醜形障害は身体醜形障害の一種で、標準以上の体格をした男性が自分の体を貧弱だと思い込み、強迫観念に駆られ体重を増やしたり、過度のトレーニングを行い筋肉をつけようとしたりしてしまう精神疾患です。一種の依存症のようなものでもあり、サプリメントの乱用、ステロイドの使用、偏食、大量のプロテイン摂取などにより多くは鬱病を引き起こし、摂食障害を併発することもあるそうです。
これは単にトレーニングをさぼって罪悪感を感じるということではなく、トレーニングや筋肉を鍛えることを何よりも優先させてしまうことで日常生活に支障をきたす症状が現れてくる状態です。
中にはボディービルダーの人たちのことを思い浮かべるかもしれませんが、彼らはアスリートであり、必ずしもそうというわけではありません。
筋肉醜形障害の要因は様々ですが、その1つはインスタグラムやゲイアプリのような画像ベースのソーシャルメディアとも言われています。日常的に投稿される他人のマッチョで筋肉質な姿を目にし、彼らと自分の見た目を比較することで嫉妬や劣等感を抱きます。それらを拭い去るようにトレーニングにますます時間を注ぐようになりますが、十分筋肉質になっても満たされることはなく、自己肯定感が低いまま悪循環が生まれます。
恐らく多くのゲイの方々は筋肉醜形障害とは無縁の日常を送られているかもしれませんし、自分のことを大切にしている方も多いと思います。もし自分の見た目に自信が持てず、不安に駆られ過度なジム通いや偏った食生活を送っているのであれば要注意です。まずは、自分を見つめ直してみることからスタートしてみてはいかがでしょうか。
今回は少し長いですが、筋肉醜形障害についての記事をご紹介します。
筋肉醜形障害(Bigorexia)って何?
多くのゲイの男性にとって筋肉となれば「大きければ大きいほど良い」という真言が幅を利かせている。
しかしながら、筋肉の大きさに執着しすぎることや二頭筋をより大きくするために極端なまでに何でもしてしまってはむしろ不健康になってしまう。
「筋肉醜形障害(bigorexia / muscle dysphoria / reverse anorexia」は、身体醜形障害の一種である。これはアメリカ精神医学会の精神疾患の診断と分類に用いられているDiagnostic and Statistical Manual(DSM-5)にて「体が小さすぎる/筋肉がまだまだ足りない」という考えに執着している症状として定義されている。
では、定期的なジム通いや体を大きくすることを夢見ることが潜在的な筋肉醜形障害のラインを越してしまうのはどの時点なのであろうか。
カリフォルニア大学の小児科准教授のJason Nagata博士は、摂食障害や筋肉醜形障害の専門家である。
「筋肉醜形障害は、男性が生活の質を悪化させるまでに外見、体の大きさ、体重、食べ物、エクササイズのことばかり考えているときに発症するとされています」と彼はQueeryに述べた。「その男性は、体の大きさや外見を不安に思い日常活動や友人との距離を置くようにもなります」
「筋肉醜形障害は、筋肉質になることに執着することで発症します。彼らは客観的には筋肉質であるにもかかわらず、自身を貧弱とみていることがあります」
「筋肉醜形障害の人々はより筋肉質になるためにアナボリックステロイドやその他外見やパフォーマンス強化薬を使ってたりします。彼らは過剰なエクササイズをしてたりもします」
Nagata博士は、1日に5時間ほどエクササイズをしている筋肉醜形障害を抱える男性を何名か知っていると述べている。
Michael Padraig Acton氏は、フォートローダーデールとロンドンの2ヶ所を拠点として心理セラピスト、カウンセラー、著者として活動している。彼は毎朝トレーニングをしており、トレーニングをさぼると罪悪感を感じるとQueertyに述べた。しかしながら、罪悪感を感じているからと言って彼は筋肉醜形障害ではないということを指摘している。彼は付き合いでの飲酒とアルコール依存症を例にとって説明している。
「もし1週間に4回パブに行って数杯飲んだとして、特に支障がなければ特に問題はありません。もし大量の酒を飲んでしまったことで生活に支障が出ているのであれば、それは問題です。これが健康的なトレーニングと筋肉醜形障害との境界線です」
拒食症のような摂食障害では、その人が問題を抱えているかどうかを判断するのは通常は容易なことだと彼は述べている。これは拒食症の人たちの多くはやつれていて体調も悪く見えるからである。その点で筋肉醜形障害は一見すると健康的に見えるので、障害の有無に気が付きずらいのである。
しかしながら、「トレーニングや筋肉を鍛えることを他の何よりも優先させているとしたら、まさにそうです」と彼はいう。「筋肉を付けたいがためにサプリメントの乱用、ステロイドの使用、偏食、大量のプロテインの摂取をしているなど。残念なことに筋肉を付けるためにステロイドなどを使用すると、不安や鬱病の症状が現れてきます」
アナボリックステロイドの使用には、勃起障害、ニキビ、高血圧、心臓・肝臓・腎障害なども関連している。
Acton氏は、トレーニングを理由に家族や友人との関係をおろそかにしたり、約束に送れるような人々も危険信号の可能性があるとして指摘している。要するに、トレーニングがあなたの生活における他の色々な場面でマイナスの結果をもたらしているのであれば、あなたは既に問題を抱えているのである。
ボディービルダーが必ずしも筋肉醜形障害であるというわけではないと彼は述べている。
「彼らのうち1人か2人は筋肉醜形障害かもしれません。しかし、プロのボディービルダーと密接な関係があるというわけでもありません。筋肉醜形障害はむしろ心理的な問題なのです。繰り返しとなりますが、それは機能障害のラインを超えるかどうかになります。プロのボディビルダーの多くはビジネスのためにやっています。彼らはアスリートです。筋肉醜形障害の症状がある人は自尊心がかなり低く、より強い不安感をかかえています」
昨年、Nataga博士らは、拒食症や過食症のような摂食障害はLGBTQの間でより顕著に現れているという研究を発表した。彼らはホモフォビアやトランスフォビアに付随するストレスがこの一因となっていると示した。ゲイの男性らは筋肉醜形障害を発症しやすいと博士は考えているのだろうか?
「ゲイの男性は、異性愛者の男性に比べて自身の体型に対して不満を感じていたり、摂食障害に陥りやすい傾向にあります」と彼は強調している。
「ゲイの男性は、差別、偏見、スティグマを経験しており、これらは自身の体型への不満感であったり、筋肉醜形障害に繋がっていることもあります。仲間、ソーシャルメディア、メディアはゲイの男性らが思い描く理想の体型に影響を与えています。自分には不可能と思われるような理想の体型が常にさらされることで、自身の体型への不満感、摂食障害、筋肉醜形障害に陥ってしまうこともあります」
「若い男性のうち3分の1はバルクアップをしようとした経験があり、22%がサプリメントやステロイドの使用、バルクアップのために食べる量を増やしたと報告している。自身の体型と理想の体型との間の認識の不一致が、体型への不満感や筋肉醜形障害を引き起こすことになります」
Acton氏は、ゲイの男性が筋肉醜形障害に陥りやすいということについては確信がないと述べている。彼のこれまでの経験を通して筋肉醜形障害は、年齢、セクシャリティー、ジェンダーの枠を超えたものであると考えている。彼はまた、LGBTQの人々は子供がいなかったり、その他家族の決まり事もあまりないので単にジムに通う時間があるのではないかと考えている。
筋肉醜形障害の要因は、若い頃に弱々しい、貧弱であるといじめを受けていたことから否定(negation)されていたことまで多岐にわたると彼は述べている。
「否定(negation)は心理学用語で、我々自身の感情を処理できない状態や我々が身を置く世界に対応できない状態のことを言います。我々はその世界にある隙間を埋めるために何かしらをせずにはいられなくなり、そうすることでそのことを考えなくて済むようになります」
彼は、不仲・失恋・その他のトラウマを経験した人を例に挙げている。
「もしくは、禁煙した人はどうでしょう。彼らは喫煙を否定するためにその代わりとなるものを探すことになるでしょう。禁煙をした多く人たちは、山歩きやエクササイズなんかをするでしょう。タバコが欲しくなるたびに、さらにエクササイズをしようします。これこそが我々の人生に降りかかるいかなる問題をも否定する方法の一つなのです」
その手の否定は長期的に見ると危険であり、健康にも良くないこともある。
両者が一致した1つの点は、ソーシャルメディアによる悪影響である。
「男性の体は、特にインフルエンサーによってこれまで以上にソーシャルメディア上で目にする機会が増えています」とNagata博士は述べている。「インフルエンサーが投稿する理想的な体型はかなり加工されたものであったり、何百枚からの奇跡の1枚という可能性もあります。それら理想の体型と自分の体型を必要以上に比較することで、自身の体型への不満を抱いたり筋肉醜形障害に陥るLGBTQの人々も出てくるでしょう」
「画像ベースのソーシャルメディアに投稿する男性は自分の容姿に対して正の強化を受け取ります。彼らは理想の体型に近づくために筋肉がより増強するような行動を取るようになり、フォロワーからのポジティブな反応がかえって悪循環を生んだり、筋肉醜形障害に繋がってしまうこともあります」
では、もし自分が筋肉醜形障害か漏れしれないと思ったらどうしたらよいのだろうか?
「筋肉醜形障害をもった人々は医師やメンタルヘルスの専門家の助けを求めたほうがよいでしょう」とNagata博士はいう。「エネルギーの消費量に合わせて栄養摂取量を増やすことをせずに過剰にエクササイズを行う人は重病化し、栄養不足が理由で入院する必要もあるかもしれません」
「自己診断の唯一の方法は考えることです。これで大丈夫なのだろうか?」とActon氏は述べている。
「これは単純ですが効果的な質問です。自分の人生にどんな影響をあたえているのか?もしうまくいっていないと感じているのであれば、治療することができますが、サポートは必要です。そのサポートというのは、これは依存症ですので、摂食障害や依存症を専門とする私であったり、セラピストやカウンセラーに診てもらうことです」
「諦める必要ありません。変化に対応できる管理方法を見つけることができ、より健康的になれ、よりバランスの取れた残りの人生を送ることができるようになるでしょう」
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