内部選考は37ヶ国の内、10ヶ国
今年5月13日(火)~17(土)にかけてスイス、バーゼルで開催されるユーロビジョン・ソング・コンテスト2025。
37ヶ国すべての代表のアーティストと曲も揃い本選開催まで約1ヶ月となりました。
これまで、2~3月に開催されていた国内選考会で選ばれた代表アーティストを紹介してきましたが、今回は、内部選考で代表が決まった10ヶ国の中から、個人的に注目している5組をご紹介します。
Louane – maman | France
フランスの代表に選ばれたのは、歌手で女優のルアンヌ(Louane)です。
Lauaneは、2013年に「The Voice France」に出場し注目を集めました。翌年に映画『エール!(La Famille Bélier)』で女優デビューし、セザール賞の有望若手女優賞を受賞しました。
歌手としは、2015年にリリースしたデビューアルバム『Chambre 12』にはヒット曲「Jour 1」や「Avenir」が収録されており、その年のフランスで最も売れたアルバムとなりました。その後も、『Louane』(2017)、『Joie de vivre』(2020)、『Sentiments』(2022)、『Solo』(2024)と、4枚のアルバムをリリースしています。
「maman」は、ラグビー・シックス・ネイションズのフランス対スコットランド戦のハーフタイムにて初披露されましたが、すごい場所で歌っています。音楽とは対照的なスポーツイベントでの披露は、新たな客層へのアプローチにもなり、非常に効果的な国内戦略のように思います。この曲は、親しみやすいメロディーとキャッチーなコーラスが特徴のバラードで、個人的には内部選考の10組の中で一番良い曲だと思います。
フランスはBig 5なのでファイナルからの出場となります。
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Mamagama – Run With U
アゼルバイジャン代表は、2021年に結成されたバンドで、ボーカルのアサフ(Asaf)、ギターのハス(Huss)、ドラムのアリフ(Arif)の3人組のママガマ(Mamagama)です。
Mamagamaの曲は、ロック、ポップ、そして伝統的なアゼルバイジャン音楽を独自に融合させたサウンドです。2022年にはアルバニアの「Kënga Magjike」音楽フェスティバルで、「Dreamer」は「International Artists」部門で第1位を獲得しました。
アゼルバイジャンは、2008年からユーロビジョンに参加しており、今回で17回目の出場となります。2011年にEll & Nikkiが「Running Scared」で優勝をしており、セミファイナル敗退は、2018年、2023年、2024年の3回のみです。過去2年については、セミファイナルの投票が視聴者票のみになったのもあり、アゼルバイジャンは苦戦を強いられています。「Run With Me」のMVには、2023年のTuralTuranXと2024年のFahree feat. Ilkin Dovlatovがカメオ出演しています。2023年の「Tell Me More」、2024年の「Özünlə Apar」も決して悪くないですが、映画の挿入歌のような優しいサウンドがユーロビジョンという舞台では少し物足りなかったのかもしれません。
Mamagamaの「Run With Me」はレトロ漂うキャッチーなサウンドですが、何よりボーカルが特徴的です。ただ、セミファイナル1は混戦が予想されるので、昨年のラトビアのドンズ(Dons)のように「またプレパにいる!」といった「ドンズ戦略」でプロモ活動を地道に行えば可能性はあるのではないかと思います。
アゼルバイジャンはセミファイナル1に出場します。
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Go-Jo – Milkshake Man | Australia
オーストラリア代表は、フランス系オーストラリア人のシンガー・ソングライター/プロデューサのGo-Jo(マーティ・ザンボット(Marty Zambotto))です。
Go-Joの音楽は、ポップ、インディー、フォークを独自に融合させたサウンドで、バイラルヒットとなった「Mrs. Hollywood」は、1,500万回以上のストリーミング再生を記録し、Tash Sultana、ジョナス・ブラザーズ、Milky Chanceといったアーティストの前座も務めています。
「Milkshake Man」は、2019年のAustralia Decidesに「On My Way」、2024年の内部選考に「Edge Of The Earth」でユーロビジョンへの出場に挑戦しているシェパード(Sheppard)と共に制作された楽曲です。
2015年が初出場で、今年で10回目の出場となるオーストラリアですが、「Milkshake Man」はこれまでのシリアスでドラマチックなバラードやパワフルなポップソングとは異なり、ユーモアと遊び心にあふれた演出とサウンドです。フランスにルーツを持つことから、歌詞の中にもフランス語が織り交ぜられています。
2021年に初めてセミファイナル敗退となり、昨年の2024年もファイナルに進むことができませんでした。2021年はコロナの影響でオーストラリアのみリモート出場になったのもありますが、昨年は本選直前の1回のみのプレパ出場ということでプロモーションが十分でないことがセミファイナル敗退の要因のようにも思います。
「Milkshake Man」を共に手がけたSheppardは、4月にイギリスおよびヨーロッパツアーを予定しているため、それに合わせてGo-Joも参加するなど、プロモーションが重要になってくると思います。個人的にはオーストラリアを応援しているので、ぜひファイナルまで勝ち進んでほしいです。
オーストラリアは、セミファイナル2に出場です。
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Theo Evan – Shh | Cyprus
キプロス代表は、歌手、ダンサー、俳優とマルチに活躍するテオ・エヴァン(Theo Evan)(エヴァンゲロス・セオドロウ(Ευάγγελος Θεοδώρου))です。
直近2年はオーストラリアからの“逆輸入”で代表が選ばれていましたが、今回は2017年以来となる、キプロス生まれのアーティストが代表に選ばれました。
幼少期から芸術活動に積極的に取り組み、音楽とパフォーマンスを学ぶため、アメリカ・マサチューセッツ州ボストンのバークリー音楽大学に進学。2021年には、1stシングル「The Wall」をリリースしています。
「Shh」は、緩急のある展開とオリジナリティあふれる楽曲で、ミュージックビデオの完成度も高めです。ライブパフォーマンスではTheoのダンスにも期待が持てそうですが、「Shh」以外のステージ映像を見る限り、歌唱力には問題ないものの、声質がややソフトで、楽曲に押されてしまいそうな印象もあり、少しだけ不安が残ります。とは言え、ライブパフォーマンスが楽しみです。
キプロスはセミファイナル1に出場です。
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JJ – Wasted Love | Austria
オーストリアの代表に選ばれた、JJ(ヨハネス・ピーチ(Johannes Pietsch))は、ウィーン生まれ、ドバイ育ちのカウンターテナーです。
2020年にイギリスの「The Voice」、2021年にオーストリアのオーディション番組「Starmania」に出場し、ファイナリストに選ばれました。
現在はウィーン国立歌劇場でパフォーマンスを行う一方で、ウィーンの音楽・芸術私立大学でクラシック音楽を学んでいます。
JJは「Wasted Love」について「あふれるほどの愛があるのに、それを受け入れてもらえない。そんなときに感じるのは、独特な胸の痛みです。まるで、壊れやすい紙の舟に乗って海を漂っているような気分です。かすかな希望にすがりついては、その希望が自分の下で静かに消えていくのを見つめるだけ。それでも、この無垢な献身には、どこか抗えない美しさがあります。結局のところ、たとえそれが無駄になったとしても、ただ「誰かを愛せる」ということ自体が、やさしくて尊いことなのです」と述べています。
彼の歌唱力は申し分なく、ステージパフォーマンスにも期待が高まる1曲です。
オーストリアはセミファイナル2に出場です。
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