知ってる!? HIVとエイズの違い
12月1日の「世界エイズデー(World AIDS Day)」も来月となりました。
ご存じの方も多いかもしれませんが、この日は世界レベルでのエイズのまん延防止と患者・感染者に対する差別・偏見の解消を目的に、WHO(世界保健機関)が1988年に制定したもので、毎年12月1日を中心に、世界各国でエイズに関する啓発活動が行われております。
今年のテーマは「知ってる!? HIVとエイズの違い」とのことです。
ひと昔は不治の病というイメージがあったエイズですが、HIVに感染したとしても早期把握、治療の早期開始・継続によりエイズの発症を防ぐことができるようになっており、HIVに感染していない人と同等の生活を送ることが期待できるようになっております。
もちろんHIV/エイズはゲイコミュニティーだけの問題ではないですが、1人でも多くの人が正しい知識を身につけておくことで自分を守ることにも繋がりますし、コミュニティー全体にも良い変化を与えることになるにもなります。
「API-Net(エイズ予防情報サイト)」では「世界エイズデー2020」の特設サイトが開設されておりますので、こちらも是非ご覧ください。
また、日本におけるHIV/エイズ感染に関する情報も同サイトの「令和元(2019)年エイズ発生動向 -分析結果-」で報告されていたのですが、令和元(2019)年の新規報告数は、HIV感染者903件、AIDS患者333件の合計1,236件となっており、凝固因子製剤による感染例を除いた2019年12月31日までの累積報告数は HIV感染者21,739件、AIDS患者9,646件、合計31,385件とのことでした。
今回はイギリスでのHIV新規感染における推移に関する記事をご紹介します。
ここ20年間においてゲイとバイセクシャルの男性のHIV新規感染診断件数が過去最少にあるとイングランド公衆衛生サービスが発表
2019年のゲイとバイセクシャルの男性におけるHIV新規感染診断件数(1年以内にHIVに感染の診断がされた件数)は、1,500件を記録した2000年以降最も少ない1,700件であった。
公衆衛生局は、ゲイとバイセクシャルの男性におけるHIV感染者数は過去最高の2,700人を記録した2011年以降、80%減少していると伝えた。 また、HIVであることを知らずに何年も生活している人もいるため、HIV新規感染診断件数は新規感染者数とは異なる。イングランド公衆衛生サービスは2019年のゲイとバイセクシャルの男性におけるHIV新規感染者数はちょうど540件であったとしている。
レポートでは、ストレートも含めて全体的にHIV新規感染診断件数の割合が低下傾向にあることを明らかにした。
合計で2018年のHIV感染診断件数が4,580件であったことに対して、2019年は4,139件となっており10%減となっている。
HIV感染の診断が遅れた人の数も減ってはいるが、十分なスピードとまでは言えない。
2019年の新規感染診断の42%は早期診断ではなかった。HIV感染の診断が遅れることは深刻な健康状の問題を発症する危険性を高めることになる。
イギリス公衆衛生サービスによると、2019年にHIV感染の診断が遅れた人々は早期診断者に比べて8倍もの死亡リスクを抱えているとのこと。
このレポートではHIV感染の減少はPrEP(暴露前予防投与)、コンドームの使用、定期的な検査、既に感染の診断がされている人を対象とした抗レトロウイルス治療といった予防技術によるものであることを認めた。
抗レトロウイルス薬を服用することで、HIV感染者はウイルス量をうまく減らすことができ、ウイルス量の検出限界値未満の状態、HIVを感染させるリスクがゼロとなることで(U=U)、コンドームなしのセックスでも相手にHIV感染させることもなくなる。
しかしながら、HIV検査数を増やすにはまだやるべきことがある。およそ30万人がセクシャルヘルスサービスでのHIV検査を拒否した。
検査にもっとも抵抗のないグループはゲイとバイセクシャルの男性のグループであり、2019年にセクシャルヘルスサービスでの検査を拒否したのはたった4%であった。
ゲイとバイセクシャルの男性の間ではある程度HIV感染が減少しているが、これは彼らがセクシャルヘルスサービスと関りがあると考えられている。
イングランド公衆衛生サービスのHIVサーベイランスのヘッドであるValerie Delpech医師は、2030年までにHIVを撲滅させる闘いにおいて素晴らしい進展を成し遂げていると述べた。
「さらなる進展は、我々がHIV感染の減少のために「性的指向、民族、地理」における不平等に取り組むことで達成することができるであろう」と述べた。
イングランド公衆衛生サービスは、HIV感染率をさらに減少させるためにもPrEPやコンドームの使用といった予防対策をし続けるように訴えた。
テレンスヒギンズトラストの最高責任者のIan Green氏はこのニュースを歓迎し、感染の減少はHIVとの闘いにおいて我々が有するすべてを使って新しことを成し遂げた証拠でもあると述べた。
しかしながら、もしPrEPが国全体に普及されていればゲイとバイセクシャルの男性における感染の減少はさらに進んでいただろうとも述べた。
Green氏は「もし政府、イングランド公衆衛生サービス、地方公衆衛生局長らが対象者の中で2019年のゲイとバイセクシャルの男性における感染件数の減少を望んでいるのであれば、PrEPの認知度をさらに高め、診療所、ジェンダークリニック、薬局、そして出産看護の一端としてPrEPを入手できるようにしておく必要があります」
「不平等さやBlack Lives Matter運動などに焦点が当てられてきたこの1年の中で、今日のHIVの統計を見るとHIVとの闘いにおいて取り残されているコミュニティーがあることを示しています」
「PrEPは、ジェンダー、性的指向、地理、民族などに関わらずすべての人にとって効果のあるものであります。しかし、知らないものに対して手を伸ばすことはできないのです」
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