未だに同性愛行為を犯罪とする韓国軍の取り決め
海外はもちろんのこと日本のメディアでも取り上げられていた韓国のトランスジェンダーの兵士、ピョン・ヒスさんの訃報。
ピョン・ヒスさんは男性として軍入隊後に性別適合手術を受けたことで強制的に除隊処分を受けていたトランスジェンダー女性で、3月3日(水)に自宅で亡くなっているのが発見されました。遺書はなかったようですが、ピョンさんは過去に自殺を試みたこともあり、警察は死因を調べているとのことです。
ピョン・ヒスさんは2017年に志願して入隊しましたが、2019年にタイで性別適合手術を受けたことで軍の審査委員会は2020年1月、規則違反だとしてピョンさんを除隊処分にしました。
ピョンさんは2020年1月に予備役となったあと、除隊処分の取り消しを求めて裁判を起こし、当初伏せていた実名を公表して軍服で動画のように記者会見に臨みました。集まった報道陣を前に敬礼し、「私は大韓民国の兵士です」と涙ながらに語り、軍人になるのが子どもの頃からの夢だったと伝えました。
さらに、「私もこの国を守る優秀な兵士の一人になれるのだということをみんなに証明したい」と涙をこらえながら話し、「どうか私にそのチャンスをください」と訴えました。
しかし、軍は昨年7月、ピョンさんの訴えを退けました。
韓国では、一般市民による同性愛行為は犯罪とは見なされないものの、兵士は禁じられており、発覚した場合は2年以下の禁錮刑に処される可能性もあります。韓国は先進国で唯一、兵士同士の合意に基づく同性愛行為を犯罪としており、これに対して批判をする国際人権団体も多いとのこと。
ピョンさんの悲報の後も、軍は当初、コメントを発表する立場にないと表明していましたが、ソーシャルメディアで厳しい批判を受けたこと受けて、国防省の副報道官が哀悼の表明をしました。
これに対して、ピョンさんの復職を支援した団体は5日、声明を出し「今、軍がピョン・ヒスさんに伝えるべきことは哀悼ではなく謝罪だ」と促しました。
軍人人権センターをはじめとする各界20団体が参加する「トランスジェンダー軍人ピョン・ヒスの復職のための共同対策委員会」は「彼ら(軍と政府)の心からの謝罪と対策を、私たちの役割として約束する」と述べ、関連行動を続けることを示唆しました。
共同対策委員会は「堂々とした姿の素晴らしい副士官、ピョン・ヒス下士。あなたを永遠に憶えている。感謝しているし、申し訳ない」と述べ、ピョンさんに哀悼の意を表しました。
ピョンさんの勇気ある行動によって韓国軍をはじめ社会全体におけるトランスジェンダーを含めLGBT+の扱いについての議論が広がりました。
ご冥福をお祈りするとともに、LGBT+の方々がこれ以上自らの命を絶つ必要のない安心できる社会になることを心から願っております。
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