元オリンピック体操選手から医師へと転身したミシェル・テルファー医師が取り組むトランスの子供たちへのヘルスケア

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トランスジェンダーの子供たちに必要な適切なケア

以前、このサイトではアメリカでの女子スポーツにトランスジェンダーの女子生徒が参加することを全面禁止する動きについて紹介しました。

私はトランスジェンダーの当事者ではないため、自分の経験としての生きづらさなどをお話しすことはできませんが、これまでお会いした方々の話であったり、インターネットなどからの情報から判断する限りでは、ゲイである私が経験した悩みと似ているようなものもあれば、トランスジェンダーの方々特有の身体的な悩みであったり、心の悩みも多くあると感じています。

トランスジェンダーの方々の中には不安やうつが見られる方も多く、自殺率も高いと言われています。特に「自分はトランスジェンダーかもしれない」と思い始める多感な時期もである思春期においては、医療従事者や専門家による適切な治療やケアが必要となってきます。

今回、オーストラリア、メルボルンのロイヤル・チルドレンズ・ホスピタルで18歳以下のトランスジェンダーの子供たちへの治療やケアに取り組むミシェル・テルファーMichelle Telfer)医師について記事と短編ドキュメンタリー(※日本語字幕がありませんでした)をご紹介します。

ミシェル・テルファー医師は、オーストラリアの体操代表選手として1992年のバルセロナオリンピックに出場しました。18歳の時に選手を引退し、その後、医師の道に進んでいます。

テルファー医師に助けを求める子供たちの件数は、2009年にはたった9件でしたが、2020年には473件にも及んでいます。全体の約20%は初回評価で治療の必要性がないと判断され、ケアが必要な子供たちには彼ら自身はもちろん、両親の同意の上第二次性徴遮断薬(Puberty Blockers)やホルモン治療を行っています。

テルファー医師の取り組みはトランスジェンダーの子供たちの受け皿となり、適切な治療やケアを提供していると評価されている一方で、その取り組みを批判的に取り上げている新聞社があり、それらについても記事とドキュメンタリーの中で述べています。

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元オリンピック選手の医師によるトランスジェンダーの子供たちへのケア

「ABC News In-depth」の短編ドキュメンタリーの中で、ミシェル・テルファーは18歳で体操選手を引退し、スポーツで怪我をしたときに治療してくれたような医者になりたいと思うようになったと述べた。

彼女は「私は小児科学か精神医学のどちらかを専攻しようと思っていました。そして、小児科学の中に思春期医学というものを見つけ、これは小児科学とメンタルヘルスとの絶妙な組み合わせだと思いました。それは自分の居場所を見つけたような感覚でした」と述べた。

2012年、産休後、テルファーはメルボルンにあるロイヤル・チルドレンズ・ホスピタルの思春期医学の主任としての仕事を引き受けることとなった。

彼女はこれまで若者のための様々なサービスを監督してきたが、病院内の子供のためのジェンダークリニックを任されたことで彼女のその後の人生が変わることとなった。

「私はクリニックに通うトランスジェンダーの子供たちのグループを引継ぐよう頼まれました。私はこれに飛びつきました」と彼女は述べた。「この仕事を始めてからトランスジェンダーの子供たちに一度も会ったことはありませんでした」

最初に受け持った子供で、名前はオリバーでした。

彼女は「私はオリバーに『なぜ自分が男の子だと思うの?いつから自分のことを男の子と思うようになったの?』と言いました」と彼女は続けた。

「その時、彼は10歳で、彼は私にこれまでことを話してくれました。それはとても素晴らしい話でした」

「そして、私は思いました。私ならこの子が男の子の体になれるように手助けすることができる。それをできる人は他にどれくらいいるのだろうか」

オリバーは、両親の同意の上、15歳の時にホルモン治療を開始した。18歳の現在、彼はABC Newsに「僕は高校最後の年にいます。僕はいつか胸部心臓外科学かそれに似たような医学を学びたいと思っています」

「僕は将来について楽観的に考えています。僕にはこの世界に大きく貢献していきたいという野心があります。そして、僕が思うのは、もしミシェルからのサポートがなかったとしたら、きっと僕はそうは思えなかっただろうし、そういった夢さえも持つこともできなかったということ」

ドキュメンタリーの中では、テルファーが担当しているイザベラという名前の10代のトランスジェンダーの女子も出演している。彼女は「ミシェルやロイヤル・チルドレンズ・ホスピタルに出会ってなければ、今の私がどうなっていたのかわかりません。私は、現在の自分の存在の大部分は、彼女や病院があってのことだったと思っています」と述べた。

しかし、子供たちが自分らしくなるための手助けをすることで大きな達成感を感じている中、トランスジェンダーの権利をめぐる議論が激しくなるにつれて、ミシェル・テルファーは批判の的になっていった。

「批判は常について回るものです」と彼女は述べた。

「標的になることへの警告を受けることなくこの医学の領域に入り込むようなことはないでしょう。そして、私は間違いなく自分自身を巨大な標的にしてきました」

彼女は特に右派の新聞である”オーストラリアン”によって攻撃を受けていると説明した。

「2019年8月から現在までの間、”オーストラリアン”は、私と私の取り組みについて50にも及ぶ記事を掲載しています」

「”オーストラリアン”は、私のような臨床医が子供たちに危害を加えようとしている、実験的なものである、まだ確立していないケアである、子供たちは潜在的に精神障害を患っており、実際はトランスジェンダーではないなどといった推測で記事を書いています」

2020年には、トランスジェンダーの子供たちへのヘルスケアに関する全国調査をめぐって右派メディアや反トランス活動家による激しいロビーイングが行われた後、オーストラリアのグレッグ・ハント保健相はこの問題をThe Royal Australasian College of Physiciansに照会した。

The Royal Australasian College of Physiciansは、その調査における考え方を完全に否定し、その代わりにトランスジェンダーの子供たちが性別適合サービスに更にアクセスしやすくすべきであると訴えた。

しかしながら、テルファーの取り組みを支持する声明が出された後も、”オーストラリアン”は引き続き彼女に関する記事を掲載し続け、その結果、彼女は不安に苦しむようになったと述べた。

最終的には我慢の限界となり、昨年、テルファーは”オーストラリアン”での掲載記事に対する42ページにも及ぶ苦情を新聞評議会に提出した。

色々あった今でもテルファーは将来については楽観的な姿勢を見せている。

「私たちがやっていることは間違ったことではありません」と彼女は述べた。

「社会は何百年もの間、トランスジェンダーの人々を無視し、見過ごそうとしてきました。しかし、我々が彼らを確認/支持しているからには、彼らができることに目を向けなくてはいけません」

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